TOEIC対策に単語の暗記は必要?
言語学者であるWilkinsの有名なセリフを紹介しましょう。
Without grammar, very little can be conveyed but without vocabulary nothing can be conveyed.
文法がなければ、伝えられることはほとんどない。しかし、語彙がなければ、伝えられることは何もない。
言語学習において語彙が必要不可欠な要素であることには、議論の余地がないと思います。Wilkinsが言うように、語彙がなければ、伝えられることは何もありませんし、理解することもできません。
単語の学習はTOEIC対策として不可欠なだけでなく、言語学習を進めていく上でなくてはならない要素です。
TOEICを運営するIIBCからの公式の単語学習についてのデータは、調べた限り見つかりませんでした。しかし、TOEICは日常的な場面の他、ビジネスシーン、広告、新聞記事など様々なジャンルを読む必要がある一方、学術論文や小説など、出てこないジャンルもあります。TOEICのための単語学習とは、どのようなものなのかを一緒に見ていきましょう。
TOEIC対策にどれくらいの単語を覚えるべき?
もちろんTOEICスコアが何点必要かによりますが、就活、転職を考えると、ざっくり日系企業で700点以上、外資系では850点以上くらいが目安になってきます。これを踏まえ、本記事では700点を目標とする前提で紹介していきたいと思います。
結論からいうと、3000語+ビジネス、TOEICで出てくるもので、合計4000語くらいが最低必要になってきます。
言語学と英語教授法の世界的権威であるNationの論文によると、英語では、最も頻度が高い3000語が一般的なテキストの約95%を占めると言われています。英語には高頻度で出現する働き者の3000語があり、TOEIC、英検、IELTS、出張、旅行、英会話、どんな状況でもまず押さえておきたい必須の語彙と言えます。それ以外無数にある単語は、特定のジャンル、状況でしか使われないため、3000語以上の単語は目的などに合わせてピンポイントで覚えていく必要があります。
明治学院大学のBrowneらはTOEICに特化した練習問題や参考書など、総単語数150万語からなるデータベースからTOEIC専用の語彙リストを作成しています。この単語リストは「TOEIC Service List(TSL)」(トイック語彙リスト)と呼ばれ、TOEIC頻出の1200語が含まれています。基本の3000語と「TSL」の1200語のトータル約4000語があれば、TOEICの語彙のなんと99%をカバーできるとされています。
TSL:https://www.newgeneralservicelist.com/toeic-service-list
ちなみに学習指導要領によると、小学校で習う単語は600語~700語、中学で校1600語~1800語、高校で1800語~2500語で、合計すると4000語~5000語を義務教育の間に学ぶ事になりますので、この中にTOEICの語彙がどのくらい含まれているかは不明瞭なものの、義務教育レベルでかなりの量の単語は含まれている事になります。
単語帳とアプリはどっちがおすすめ?
単語学習を進めるにあたっては、アプリと書籍の選択肢がありますね。それぞれにメリットとデメリットが存在しますので、この章で一緒に比較してみましょう。
単語帳のメリット・デメリット
書籍はインターネット接続の有無に関わらず使用でき、眼の疲れもデジタルデバイスより少ないと言えます。また、実際に手でページをめくる行為は記憶に対する肯定的な影響をもたらすと言われています。そして何より、出版される書籍は専門家によるレビューや編集を経ているため、その内容の信頼性は高いです。
しかし、デメリットとしては、音声にアクセスしにくいことがあげられます。言語は音声でできているというスピーチプライマシーの考え方に基づくと、音声にアクセスしにくいのは大きな欠点になってしまいます。また、持ち運びの不便さ、ものとしての保管場所を考える必要があることも、デメリットに数えられるかと思います。
単語アプリのメリット・デメリット
アプリは持ち運びが便利で、いつでもどこでも学習が可能です。また、インタラクティブな要素が多く、ゲームの要素を取り入れた学習が楽しめるのも魅力的です。さらには、アプリによっては学習の進捗管理や弱点の分析が可能なものもあります。そして何より、アプリを利用すれば、単語の発音を簡単に聞くことができ、音と意味とスペルを同時に覚えるのが簡単になります。
デメリットとしては、時にネットワーク接続が必要だったり、バッテリーの問題があったりします。また、質の低いアプリも存在するため、選択には注意が必要です。
両者を比較してみて、あなた自身のライフスタイル、学習スタイルに合った方法を選ぶことが最も重要です。両者とも素晴らしい学習ツールであることは間違いありません。単語の習得は英語学習の基礎となりますから、適切な手段を選んで、楽しく学習を続けていきましょう。
効率的に単語を覚えるコツ
単語を覚える科学的に一番いい方法というのはありません。研究では色々な角度から単語学習について知見が深まっており、効果がありそうだという要素が浮かび上がっています。
ここではそのうち3つを、立教大学の中田達也氏・神奈川大学の鈴木祐一氏による『英語学習の科学Q&A』より、ご紹介します。
なお、単語の覚え方としては、単語帳、文脈の中から覚える、カタカナで語呂合わせ、など様々な方法があり、それぞれ効果があります。
悪い覚え方、いい覚え方などはありませんので、適材適所でふさわしいものを選んで使い分けていくことが一番です。
ここでは「初級者が一番効率よく単語を覚えていくための覚え方」という前提で、単語帳の使い方について述べています。
テスト効果
人間の記憶は思い出すなどテストの要素を加えると、定着度が高まる特性があります。これをテスト効果と呼びます。テスト効果を利用して効率的に単語学習を進めるためには、まるでテストを受けるつもりで取り組むことが大切です。
たとえば、最初に単語帳を見るときは、内容を把握するために一通り全体を読み、2周目以降は、すぐに日本語訳を見るのではなく、英単語→日本語訳の確認の間に3秒ほど時間をとって、自分で答えられるかテストしてみるといいでしょう。
このとき、テストの結果が正解であることが重要なのではなく、たとえ不正解だったとしても毎回必ず「思い出そうとすること」を最大の目的とすることが肝心です。なので、一番避けるべきなのは、毎回テスト形式で行いつつも流れ作業でやってしまうこと。それよりも、毎回テストに真剣に取り組むことが、記憶の強化に繋がります。
分散効果
分散効果は、学習のスケジュールに関連がある概念です。ある学習項目を間隔をおかずに複数繰り返すことを「集中学習」と呼ぶのに対し、ある学習項目を間隔をおいて複数回繰り返すことを、「分散学習」と呼びます。
これをうまく利用するために、1日の学習時間を短く限定し、繰り返しの回数を増やすという方法が考えられます。たとえば同じ60分でも、1日で60分学習するよりも、15分を4日にわけて合計60分学んだ方が、学習効果は高いとされています。
繰り返しの回数
「単語を何回繰り返して学習すべきなのか?」という問題については、多くの研究者が答えを探そうとしていますが、未だ合意には至っていません。
Nakata(2017)の研究によると、単語カードなどで意図的に語彙を学習する場合は、5回の繰り返しが目安になることがわかっています。あくまで目安としての紹介になりますが、単語の繰り返し回数の目安としては、5回がキーワードになりそうです。
【初心者向け】おすすめ基礎単語帳
夢をかなえる英単語 新ユメタン0 中学修了〜高校基礎レベル
そもそもここを知らないと英文を読むのが難しいという中学校初級のレベルから収録されています。中学校の復習からスタートしたい方におすすめ!
高校入試 でる順ターゲット 中学英熟語400 四訂版 (高校入試でる順ターゲット)
こちらも”want to”や”a lot of”など、そもそも知らないと英文を読むのが難しいレベルの熟語から収録されています。単語だけでなく熟語のインプットを中学校の復習から実施したい方におすすめ!
英単語ターゲット1900 6訂版 (大学JUKEN新書)
この単語帳が押さえられれば基本語彙はある程度習得が進んでいると考えても良いです。受験用にはなっていますが、TOEIC以外でも必要になる基本的な語彙なので押さえておきたい内容。次のセクションで紹介する銀のフレーズと収録されている内容が被る部分もあります。
【初心者向け】おすすめTOEIC用単語帳
TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ
このあと紹介するTOEICの単語帳の代名詞、金のフレーズの入門編、銀のフレーズ。フレーズで覚えられることで、単語の意味だけでなく使い方まで一緒に習得できるのが非常に効率的です。ぜひ単語だけでなく、フレーズで覚えるように心がけて使ってみてほしいです。
キクタンTOEIC L&Rテスト SCORE600
TOEICのビジネス文脈の訳語がついているので、これまで知っていた単語も改めてTOEICで出てくる意味を入手できます。TOEICで600点以上を取りたければ、この単語帳に出てくる単語で知らないものがあると難しいと言えるほど、確実に押さえておきたいTOEICの常連単語が並んでいます。
TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ
単語帳の代名詞。TOEICを知り尽くした筆者が編集しているので、安心してお勧めできる一冊。金のフレーズのシリーズは、よくTOEICで使われるフレーズ単位で覚えられるので非常に効率がいいほか、単語の意味だけでなく他の単語との組み合わせ方が一緒に学べるのがとても効果的です。
この一冊を入念に習得し、実際に990点を取った受講生もいました。
【初心者向け】おすすめ単語アプリ
mikan
中学の復習の入門レベルから、TOEIC、日常会話など幅広いジャンルの英語学習を網羅する単語学習アプリ。苦手なものにフォーカスして勉強したり、音声を確認しながら聞いたり、親しみやすいインターフェイスと様々な継続のための工夫で、楽しく学習できます。
abceed
毎月1,650円で、豊富な教材野中からTOEIC対策の単語帳に無制限でアクセス可能なアプリです。音声やテストも無制限に利用できます。学習進捗はグラフで確認できるので、継続的な学習習慣を作るのに大変効果的!
さらに、単語学習だけでなく、多読、問題集、映画教材なども使い放題なので、かなり強力な学習ツールになってくれるでしょう。
おわりに
TOEICの単語学習についてお伝えしました。単語は単調で退屈になりがちな学習ジャンルですが、英語力の基盤を作る本当に重要な要素です。一人でやるのが大変でしたら、コーチをつけて自分にあった進め方、学習方法をコーチと一緒に学ぶこともできます。
長い道のりだからこそ、楽しく長く続けられる方法を見つけていきましょう!
迷わず、挫折せずに英語を身に付けたい方は、自分にあった学習方法をプロの英語学習コーチに相談することがとても有効です。無料カウンセリングを実施していますので、ぜひ相談してみてください。(無理な勧誘など一切ないので、ご安心ください。)
こんにちは。TOEICのスコアアップを目指す皆様にとって、大きな課題となるのが単語の学習でしょう。やらなきゃいけないのはなんとなく知っているけど、一体どのくらい勉強するべきなのでしょうか?単語の学習方法やその必要性、そして覚えるべき単語の数は?
この記事では、TOEIC対策としての単語学習の重要性や方法について詳しく探っていきます。語彙の力を身につけ、TOEICスコアをさらに引き上げるためのヒントを見つけていきましょう。