TOEICで文法力は必要?
TOEICで文法力が必要かどうかは、議論の余地がないでしょう。皆さんが今読んでいる日本語も、いろいろな単語を文法のルールに基づいてつなげたものです。文法があって初めて、単語はつながり、意味が表現できるようになるのです。
この記事で話題にするTOEICは、TOEIC Listening & Readingのことですが、この試験は、リスニングとリーディング合わせて200問を、120分で解いていく試験です。
TOEICはビジネスに特化しており、複数のパラグラフ(段落のこと)にまたがる論文記事や、長い講義のリスニングなど、パラグラフの構成を把握して情報処理をする場面がIETLSやTOEFLに比べて多くありません。
つまり、比較的短いパラグラフや短文のレベルを扱っていく質と量を求められる試験なので、文法と語彙の基礎力が高ければ高いほど、高得点を目指せるテストになっています。
あくまで目安ですが、730点くらいまでは、文法と語彙をしっかり伸ばせれば、成長実感を持った学習が継続できるでしょう。
パート5・6は文法力そのものが問われる
TOEICのリーディングセクションのPart5では、文法問題が全30問出題されます。20語前後の文を読み、空欄に適切な表現を入れていく空欄補充の問題です。
いわゆる穴埋め形式の問題ですが、この手の問題の最大の特徴は、文脈がないことです。
普段我々は、文脈の中で言語を使用しています。たとえば、今読んでいただいているブログも、TOEICの文法の勉強に必要な情報を探すという文脈の中で、読んでいるはずです。その前提で以下の空欄を埋めてみてください。
TOEICは基本的なことがわかっていればしっかり回答していくことができる。TOEICの勉強をする際に重要なのは、【 】である。
1 文法 2 努力 3 気合い 4 海外経験
文法の記事だということがわかっていれば、この空欄は迷わず1が選べると思います。でも、なぜでしょう?
普段人間は状況や背景知識をフル活用して、文脈の中で読むという活動をしています。そのとき、予測したり、話の流れを考えたりしながら読むことができるので、たとえわからない部分があっても、内容を把握していくことができます。このような読み方をトップダウンの読み方と言います。
しかし、TOEIC part5のような短文の空欄補充では、さまざまな脈絡のない文章を読んでいく必要があるため、自分の背景知識や予測を使うことができません。すると、文を理解するために、目の前にある文を、文法と語彙の力で読み解くしかなくなるのです。これは、ボトムアップの読み方と呼ばれます。
同じくTOEICリーディングセクションのPart6をみてみると、Part5と少し違い、長い文の中で空欄補充をしていく形式になります。文が長くなる分、全体の大意を把握して解くといったトップダウンの戦略も使えるようになりますが、空欄を埋めていく段階では、前後の文構造、修飾関係、指示語の内容などをボトムアップでつまびらかに把握する必要があります。
このようにPart5とPart6は、予測や推測が働きづらく、ボトムアップで目の前の文を理解できる文法力が必須です。
Part7は長文読解で、全てを解き切るには54問の問題を、55分で読み切る必要があります。このスピードを出すためにはそれ自体英語力が高くないと難しく、初学者のリーディングにおける得点源は、Part5,6が中心となります。文法と単語がしっかりわかれば、730点くらいまでは達成できます。
文法は正確な読みの基盤となるだけでなく、TOEICというテストの特徴からみても、初めのうちにできるだけマスターしておくのが得策でしょう。
文法がわかると全パートスコアアップにつながる
Part5, 6だけでなく、文法力は、TOEICの全パートで重要な役割を果たします。文法こそが、単語に役割を与え、意味を創造する装置だからです。単語にももちろん意味はありますが、それだけで意思疎通ができるわけではありません。実際に例をみてみましょう。
あなたが公園にいると、二歳位の女の子が遊んでいます。滑り台に乗ったり、砂場であそんだりしているうちに、あるとき女の子はあなたに駆け寄ってきて、”Push!(押して)”と話しかけてきました。あなたは何を求められているのでしょう?
- しゃがんで、女の子を優しく後ろに押してあげますか?
- それとも、女の子が手に持っているぬいぐるみを押してあげますか?
- 公園のブランコまで一緒にいって、女の子をブランコに乗せ、後ろから押してあげますか?
もし、この女の子が目的格の一人称代名詞と前置詞句を使って、”Push me on the swing!”と言っていれば、ブランコにのったその子を押してあげることが求めれていたとわかりますね。でも、単語だけでは意味を正確に伝えることはできません。
単語は文法に沿って並んで初めて、明確な意味を持つのです。文法は、ことばに意味を構築させる力があります。
少し話が抽象的になってしまいましたが、TOEICだって同じです。リスニングをするにも、リーディングをするにも、文法がないと端的にいって正確に理解することができません。
例えばTOEICのリスニングセクションは、音声が1回ずつしか再生されません。文法の力がないと、どんなに耳が良くても、いつまで経ってもキーワードだけしか聞き取れず、それらをカンで繋ぎ合わせて考える解き方になってしまいます。
文法は英語力そのものの基礎になるものです。どんな状況で英語を使っていくにしろ、必要不可欠な知識になります。もちろんTOEICも、文法力をつけることで、スコアアップができることは明白です。
【文法苦手・初心者】まずは文法の基礎固めを!
さて、文法の重要性を確認したところで、ここからは、「そうは言っても文法苦手なんだよな…」という方のために、どのように基本を固めていけばいいかをお話ししていきます。文法や文構造の捉え方について書かれた「文法書」と、文法問題に取り組んでいくための「文法問題集」の二つのジャンルに分けて、進めていきます。
TOEICの問題を解く前に文法書を読む
文法に全然自信がない場合は、TOEICの問題に取り組む前に、まずは文法書を読みましょう。最初は、個々の文法の説明よりも英語の文構造のルールについて書かれているものが良いです。個々の文法について学ぶのは、文構造のルールを把握してから、あるいはしながらで大丈夫です。おすすめの文法書は、この記事内で紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
一方、文法問題集はテストのようなものです。知っていることの確認が目的になりますから、いきなり解くことは難しいし、効率が悪くなってしまいます。問題を解くためには、解答するための知識を持っていることが前提となるので、まずは文法知識をインプットするために、文法書から始めるが得策です。
文法書を通じて基礎固めをすることで、文の構造や仕組みを把握することができるようになり、TOEICの問題に対しても自信を持って取り組むことができます。自分のペースで取り組みながら、確実に文法力を向上させましょう。
文法書の具体的な取り組み方
ここでは、文法書を効果的に活用するための具体的な取り組み方をご紹介します。学習の分散効果という考え方に基づいた実践を紹介していきます。
1周で読破しようとせず、何周かにわけて読んでいきましょう。この方が、理解が段階的に深まっていくのと、復習の回数が増えることで記憶に残りやすくなります。
まずはさっと全体を掴むことが大切です。最初の一周では、ざっくりとした理解を目指しましょう。その後周回し、理解を深めていきます。何度も繰り返し学習することで、効果的に学び、記憶にも残りやすくなることが分かっています。
次に、単に読むだけでなく、積極的に自分で英文を作ってみましょう。誰に見せるわけでもなく、好奇心を持って自分で表現してみましょう。短くても、間違えても構いません。自分の考えや感情を自分の力で英文で表現することで、単なる知識ではなくスキルとして学ぶことが可能になります。speakなどのアプリを使えば、短文レベルでの発話は十分練習できるでしょう。
自分の理解度に合わせて学習スケジュールを立て、コツコツと取り組んでいきましょう。
TOEICの文法基礎固めのおすすめ参考書
大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】 (名人の授業)
発売以来「これでわからなかったら,もうあきらめる」と言われるほど大好評の文法解説書。英文の基本から、話し言葉を使った簡潔でわかりやすい表現で文法項目が整理されています。内容はTOEICに限らず英語の学習をしていく上で、上級に進んでも常に頭に置いておく必要がある超重要事項ばかり。非常に参考になると思います。
英文法のトリセツ じっくり基礎編
中学校のときから英語負け組を自覚し高校中退も経験した筆者による非常に丁寧で親切な解説書です。中学校の文法から復習を始める方、英語が嫌い、苦手、という意識がある方にこそ、この書籍から文法に出会い直して欲しいと思います。「品詞」や「文のカタチ」など英文法の基本中の基本をベースに、英語と日本語との根本的な違い、使い方とその注意点について「じっくり」300ページ超にわたって解説します。
中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。改訂版
この1冊で,中学で学習するすべての文法項目を網羅しています。難しい用語を避けた解説とフルカラーのイラストで基礎からやさしく学べます。品詞や文の構造についてはなんとなくわかっているけど、中学校の文法ってどんなのがあったかな?という場合におすすめです。時間をかけずにさっと復習するのに便利で、他の問題集と組み合わせることで真価を発揮する一冊です。
TOEICの文法問題を解くコツ
このセクションでは、TOEICの文法問題の学習方法についてみていきましょう。
解き方を固める
文法問題を解く際には、精読が鍵となります。読み飛ばしをせずに、じっくり文の頭から読んでいきましょう。意味の切れ目が出てきたら、スラッシュを入れながら読み進めます。最初の段階では、解答を見つけることよりも文を文として読み取ることが重要です。
ネイティブスピーカーであっても、すべての単語に目を向けて読むことが、リーディング時の視点の動きの研究からわかっています。学習初期に読み飛ばしだけで解くやり方が身についてしまうと後悔することになるので、じっくりと文を把握して読むことが大前提です。
とはいえ、実際本番のテストで全ての問題を精読するのは、ちょっと効率的とは言えません。本番のテストでは、選択肢見て、空欄の前後を見て、その情報だけで解けるものは解いてしまうのが良いでしょう。これができないものは精読で解いていくことになるので、いずれにせよ、練習時は精読を心がけ、本番は選択肢と空欄の前後をみて、という形で解いていきましょう。
先述したように、文法問題はテストです。問題を間違えるときは、自分の伸び代が明らかになるチャンスなので、必ず解説を読んで、わかっていなかったところを腹落ちするまで確認しましょう。文法問題集を解く時間ではなく解説を読む時間で、知識のインプットが発生します。
スピードを意識して解く
TOEICをPart7まで時間内に解くのは実はとても難しいので、初学者の方はまずはスピードよりも、文法の正確性と語彙力の向上に注力しましょう。文法と単語の正確性が身につけば、自ずとスピードも上がり、正確な理解によって得点アップが期待できます。精読がちゃんとできれば、まず600点はめざせると思いますし、正確に読む力がつけばつくほど、徐々にスピードが上がっていきます。
800点以上を目指す場合、徐々にスピードにも注目しましょう。最終的には10分以内に正確に解けるようになれば、800点以上、満点も見えてきます。
Part5は全部で30問ですから、一問あたり30秒が目標です。ただし、スピードを上げるために読み飛ばしをするのは逆効果。読み飛ばしの癖がついてしまうと文法を処理する力が生かせません。文全体を構造理解しながら頭から読むスピードを徐々に上げていくことが望ましいです。
簡単に判断できるものが増えてきたら、接尾辞の知識や空欄前後だけに注目する方法を活用しながら、徐々にスピードを上げていきましょう。
何度も解き直しをする
一度解いて解説を見ただけでは、得られる効果は限定的です。問題集は最低でも必ず2周は実施しましょう。
1回目で解説を読んで理解したことが、2回目でもしっかりと解ける知識になっていることを確認します。2周目が終わったら、2周目で間違えたところに重点を置いて3周目を行いましょう。少なくとも2周、できれば3周で文法問題集を解くことで、驚くほどの読解力を身につけることができます。
文法問題集は周回するのが前提なので、解答を直接書き込むことはせず、必ずノートなどに実施していきましょう。
TOEICの文法問題のおすすめ参考書
最後にTOEICに特化した文法問題のテキストを3つほどご紹介します。
https://amzn.to/3DKNDRXTOEICL&Rテスト 英文法 ゼロからスコアが稼げるドリル
英文法が苦手な方のためのTOEICのための文法入門書です。解説→練習問題という流れで、TOEIC頻出の項目をカバーできます。
練習問題は2択から始まるので、難易度は低く設定されていますが、使用される語彙などはしっかりビジネスの文脈で使われるものなので、TOEICを念頭に作られている初心者用の文法問題集です。
https://amzn.to/44EQNlM1駅1題 新TOEIC TEST文法特急
TOEICの文法対策の参考書として、不動の人気を誇る一冊です。この参考書では、TOEICでよく出題される文法に絞って、必要な文法事項を網羅しており、効率的な学習が可能です。解説が正答に加えて、誤った選択肢や関連情報も含まれており、非常に充実しているのが特徴です。
難解な専門用語もなく、初心者に寄り添いながらも深い理解を実現した一冊と言えるでしょう。一問一答形式で、忙しい社会人でもスキマ時間で学習できます。
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言わずとしれたTOEIC文法の金字塔的な問題集で、各書店で一位を取り続けています。TOEIC500点以上から満点を目指すレベルまで使える圧倒的な問題数と、解説の充実が特徴です。
1問ずつ解説が詳しく書いてあるので、解いてすぐに解説を読みながら進めることができます。問題形式は四択の空欄補充のみ。空欄だけをみて解くのではなく、一文を文として読む練習として、空欄はついでに埋めるつもりで進めると効果的でしょう。Part5の模擬試験もついていて、TOEIC対策としても有効です。
おわりに
TOEICリーディングセクションに限らず、リスニング、英会話、メール、すべての土台となる文法。特にこれから英語を学ぶという方には、絶対に避けては通れない道です。それなら、一番効率的に学習するのが一番。文を文として読み、意味を正しく理解するために、文法書と文法問題集を組み合わせて、丁寧に学んでいきましょう。
迷わず、挫折せずに英語を身に付けたい方は、自分にあった学習方法をプロの英語学習コーチに相談することがとても有効です。無料カウンセリングを実施していますので、ぜひ相談してみてください。(無理な勧誘など一切ないので、ご安心ください。)
こんにちは!
TOEICの受験を考えている皆さんにとって、文法の理解と運用は、一番の基礎であり、高得点を狙うためにも磨き続ける必要がある非常に重要な要素です。
今回は、TOEICの受験を控えているが文法は苦手意識がある、英語の勉強が久しぶりでどこから着手したらいいかわからない…という方のために、TOEICにおける文法の重要性と、効果的な学習方法について紹介していきます。 一緒に英語力を高め、英語で自分の人生を切り開いていきましょう!