中国語の検定試験HSKのスピーキング【HSKK】についてプロが解説

中国語の検定試験で有名なHSKですが、そのスピーキング試験はHSKK(HSK口試)という別の試験になっています。

今回はプロの中国語コーチが、受験経験・試験監督としての経験も踏まえ、HSKK(HSK口試)の特徴や受験するときの注意点、対策などを説明するので、記事を読みおわたっときにはHSKKとはどんな試験なのかが明確な状態になります。(ちょっとマニアックな豆知識も書いているので、よく読んで試験に臨んでくださいね)

HSKK(口試)とは

HSKKとは、中国語レベルスピーキングテストを中国語読みした「汉语水平口试考试 Hànyǔ Shuǐpíng Kǒushì Kǎoshì」の頭文字をとったもので、リスニング・リーディング・ライティングで構成されるHSKとは別に、中国語のスピーキング能力を測ることに特化した検定試験です。

HSKの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

HSKK(口試)全体の特徴

HSKKの特徴は以下の3つです。

  1. 試験時間が短い
  2. ボイスレコーダーに録音して提出する
  3. 他の受験者の声が聞こえる

1つずつ見て行きましょう。

試験時間が短い

HSKKの試験時間は30分もないので、HSKと比較してもかなり短く、半日や1日拘束される訳ではないの、時間だけで言うと、受験のハードルは低いと言えます。

ボイスレコーダーに録音して提出

HSKKでは、会場で配布されたボイスレコーダーに自分の声を録音して、最後にそのレコーダーを提出します。

スピーキングの試験は対面で試験官や面接官と会話をして点数がつけられるようなものもありますが、こうした対人試験ではないということですね。

使われるボイスレコーダーについて

少しでも緊張を和らげるために家でも本番と同じレコーダーを使いたいという方は、こちらのOLYMPUS ICレコーダー VoiceTrek VN-541PCを使いましょう。(2020年10月現在日本のHSKK紙試験で使われているタイプです)

※ネット試験ではボイスレコーダーではなく、会場にあるパソコンに録音して提出します。

他の受験者の声が聞こえる

HSKKは会場で声を出して録音するのですが、その際に一緒に受けている他の受験生の声も聞こえてきます。一般的に他の受験生の解答が聞こえる中での試験は少ないので、きっと戸惑う方も多いと思います。(英語の試験であるTOEFLibt受験経験がある方はやはり同じように他の受験生の声が聞こえる中で受験をするので違和感がないかもしれません。)

HSKKでは長く話そう

HSKKでは一定の長さを話すと言うのも高得数に繋がるので、なるべく制限時間ギリギリまで話し続けましょう。そうすると、最後他の受験者が終わって静かにしてる中、自分だけが話している(つまりみんな自分の声を聞いている)という時間になりますが、そうなった時には「よし、長く話せてる」と思い、自信を持ってみんなに聞いてもらうマインドで臨みましょう。

HSKK(口試)各級ごとの特徴

HSKKは初級・中級・高級の3段階の難易度に分かれています。

各級の特徴は以下の通りです。

HSKK各級のレベル

HSKK初級

日常話題を聞き取り、また表現することができ、基本的なコミュニケーションのニーズを満たすことができる。

HSKK中級

中国語で、中国語を母国語とする者と流暢にコミュニケーションをとることができる。

HSKK高級

中国語で自分の意見や見解を流暢に表現することができる。

HSKKで必要な単語量

各級の学習に必要な単語量は以下の通りです。

  • HSKK初級:200語
  • HSKK中級:900語
  • HSKK高級:3000語

HSKに必要な単語数は以下の通りなので、これと比べるとHSKKはやや少ないですね。

HSK1・2級レベルであればHSKK初級、HSK3・4級レベルであればHSKK中級、HSK5・6級レベルであればHSKK高級に相当します。

  • HSK1級:150語
  • HSK2級:150語
  • HSK3級:300語
  • HSK4級:600語
  • HSK5級:1300語
  • HSK6級:2500語
何でHSKKで必要な単語はHSKで必要な単語より少ないの?

実際にスピーキングで使われる語彙というのは書面で使われるよりも少ないので、そうした実態が反映されたものと考えられます。つまり、HSKKで必要とされる単語数は少ないものの、これは「知ってる単語の数」ではなく「使える単語の数」と捉えましょう。

HSKKの合格基準

HSKKの点数は全て100点満点で、その6割である60点以上の点数をとることができれば合格です。

これはHSKと同じですね。

HSKKの試験内容

HSKK各級の試験内容は以下の通りです。

HSKK(初級)

※時間は解答時間と準備時間のみの時間

パート形式問題内容問題数時間
第1部分復唱放送を聴いて、その文章を復唱。15題6分
第2部分聞き取り質問を聴いた後、それについて端的に答える。10題4分
準備時間(第3部分に対する回答の準備)7分
第3部分読み取り問題用紙に書かれた2つの質問(ピンイン付記)に対して回答。
5語以上の言葉を使って答える。
2題3分
HSK公式Webサイトより引用

HSKK(中級)

※時間は解答時間と準備時間のみの時間

パート形式問題内容問題数時間
第1部分復唱放送を聴いて、その文章を復唱。10題5分
 準備時間(第2部分、第3部分に対する回答の準備) 10分
第2部分絵を見て話す問題用紙にある1枚の絵を見ながら、それについて話す。2題4分
第3部分読み取り問題用紙に書かれた2つの質問(ピンイン付記)に対して回答。2題4分
HSK公式Webサイトより引用

HSKK(高級)

※時間は解答時間と準備時間のみの時間

パート形式問題内容問題数時間
第1部分要約放送を聴いて、その内容を要約する。3題8分
 準備時間(第2部分、第3部分に対する回答の準備) 10分
第2部分朗読問題用紙に書かれた文章を朗読する。1題2分
第3部分読み取り問題用紙に書かれた2つの質問に対して回答。2題5分
HSK公式Webサイトより引用

HSKK各級の問題形式まとめ

各級の問題形式をまとめると以下のようになります。

第一部第二部第三部
高級リスニングして復唱。3問、解答時間7分。文章の朗読。1問、解答時間2分。試験問題を読んで回答。2問、解答時間5分。
中級リスニングして復唱。10問、解答時間3分。写真を見て話す。2問、解答時間4分。試験問題(ピンイン付)を読んで回答。2問、解答時間4分。
初級リスニングして復唱。15問、解答時間4分。リスニングして答える。10問、解答時間3分。試験問題(ピンイン付)を読んで回答(5フレーズ以上)。2問、解答時間3分。
HSKKではメモができる

HSKKではどんな話をしようかという内容をメモすることができます。紙試験であれば紙に、ネット試験であればパソコン画面上にメモを取ります。レコーダーやパソコンにに吹き込む内容は、必ずメモを活用してまとめておきましょう。

実は必須なリスニング能力

HSKKの試験内容をみて気づいた方もいるかと思いますが、スピーキングの試験といっても、リスニングしてから復唱や要約をする内容があるので、発話できれば良いのではなく、リスニング力があることが前提となっているので、順番としてはHSKの練習をしてからHSKKを受験する方が効率は良いです。

リスニング力を鍛える方法についてはこちらの記事をご覧ください。

HSKK(口試)の資格としての価値

HSKKはHSKと同様に中国政府公認の試験なので、価値のある資格です。

ただし、中国への留学などで大学から求められる資格としてはHSKが使われることがほとんどです。各企業で求める資格も様々なので、自分がその資格を提出・提示する先が何を求めているのかは確認をしておきましょう。

今まで中国語コーチングのthe courageが研修を担当してきた企業の中にはHSK、あるいはHSKKどちらかの基準を満たせば良いというところもありました。

また、まだまだ中国語の検定試験の認知度が高くないことから、もし就職や転職で使う場合には、自分はHSKKのどの級を合格していて、それは一般的に中国語でどんな業務ができるレベルなのかを説明できるようにしておくと良いです。

また、提出する予定がなくても、自分のスピーキング力を確認するための具体的な目標としてSHKKを受験する方もいるので、目標設定としての価値も高いと言えます。

HSKK(口試)の対策教材と活用方法

HSKKは、HSKとは違い実際に「話す」という能力が求められるので、「話す」トレーニングを行う必要があります。

HSKK過去問

『中国語検定 HSK 公式 過去問集 口試 2013年度版 改訂版 [音声DL付]』

HSKの過去問は各級ごとに購入が必要ですが、HSKKは初級・中級・高級が全て、過去5回分の問題が収録されています。

なので、まず試しにそれぞれの問題を見てから受験する級を決めるのも良いかと思います。

また、最初に流れる「受験番号を録音してください、名前を言ってください」などのアナウンスも収録されているので、本番当日に慌ててしまわないように、決まったアナウンスはこの過去問で覚えてしまいましょう。

その他のHSKK対策に使える教材

過去問で問題形式などは把握できますが、トレーニングをするという観点ではトレーニング用の教材を使う方が良いです。

ここではHSKKのためのトレーニングに使える教材を紹介します。

中国語作文の教材

とても重要なことですが、スピーキングの練習は、作文練習が全てと言っても過言ではありません。

というのも、正しく書けないのに、正しく話せるということは基本的にはないからです。

ただの楽しい会話であれば、多少正しくない文であっても、その場の雰囲気や、出てきた単語などで話し手の意図を理解することは可能です。

ただ、スピーキングの試験では「意味が通じれば良い」のではなく、「正しく伝える」ことが必要になります。なので、まずはじめにやるべきトレーニングは正しく書く、つまり作文ということになります。

そして、作文をするのであれば『口を鍛える中国語作文』シリーズがおすすめです。これは中国語コーチングスクールthe courageでもリスニング・スピーキング強化として採用しているテキストで、日本語とそれに対応する中国語の短文が文法ごとに掲載されているので、弱点把握もしやすいとても良いテキストです。(改定新版が11月上旬に発売予定ですが、それまでに購入が必要な方は従来版で全く問題ありません。)

使い方としては、まず日本語を見て作文をする(書かなくても「言う」でOKです)。

そのうえで中国語を確認し、もし間違っていたら、単語と文法どちらに問題があったかを確認して、その原因をクリアにして再度挑戦しましょう。

文法教材

文法について、もし抜け漏れがあると感じている場合は、以下のような体系的な文法書を使って不明点を解消しておきましょう。上記作文で見つかった弱点項目だけを確認するという方法でも良いです。

7つの述語文でつかむ 中国語ステップ100

シャドーイング教材

作文ができることとは別で、発音・リズムなども中国語らしく鍛えていく必要があります。

発音の教材についてはこちらの記事をご覧ください。

中国語らしいリズムを身につけためにはこちらの教材を使って音読やシャドーイングを行いましょう。正しいシャドーイングの勉強方法は意外と難しいので(多くの方ができていないので)まずは正しい音を聞いて、真似するように音読する方法からはじめると良いです。

HSKK(口試)の対策に使えるアプリと活用方法

HSKKを受験するにあたり、アウトプットの機会を多く持つ必要がありますが、日本国内にいるとなかなか機会を作ることが難しいです。そこで、今回はHelloTalkというアプリを紹介します。

アプリ内で作文した内容をタイムラインに投稿すると、ネイティブが添削をしてくれます。文字で打ち込んで、合わせて声も投稿することで発話のトレーニングにもなるのですごくおすすめです。

詳細はこちらの記事をご覧ください。

HSKK(口試)の受験料

HSKKの受験に必要な料金は以下の通りです。

料金(税込)
初級5,610円
中級6,710円
高級7,810円

HSKK(口試)ネット試験について

HSKKネット試験(会場でパソコンでの受験)が可能です。

ネット試験も試験の内容は変わりませんが、ネット試験ですと、イヤホン・ヘッドホンをして試験を行うため、周りの受験生の声が聞こえる中でも少し集中がしやすいというメリットがあるかと思います。

ネット試験についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

HSKK(口試)開催頻度

HSKKの開催頻度は、HSKに比べると少なく、3ヶ月に1度くらいの頻度となっています。受験会場などによって開催日が異なるので、必ず公式サイトで日程を確認するようにしましょう。

ネット試験年間スケジュール

紙の試験スケジュール

HSKK(口試)受験までの流れ

ここではHSKKの受験までの手続きの流れをネット試験と紙試験それぞれ説明します。

HSKK~ネット試験~

  1. インターネットで試験に申し込む(郵送不可)
  2. 料金を支払う
  3. 受験票を自分で印刷
  4. 受験票に記載されている受験会場に行く

ネット試験は受験票は自分で申請して印刷する必要があります。郵送されることはありませんし、会場で印刷をお願いすることもできません。受験票が無いとせっかく会場に行っても受験ができないので気をつけましょう。受験票の印刷方法についてはこちらをご覧ください。

HSKK~紙試験~

  1. インターネットで試験に申し込む(郵送でも可)
  2. 料金を支払う
  3. 受験票が届く
  4. 受験票に記載されている受験会場に行く

最後に

今までHSKK(HSK口試)を受験したり監督官をしてきていますが、やはりこうした資格試験は具体的な目標設定として非常に有効だと感じます。

資格試験には全然興味が無く、会話力を鍛えたいという方も多くいらっしゃいますが、会話の目標設定は曖昧になりがちなので、明確な目標設定の候補として考えてみてください。

また、HSKK/HSKの受験や中国語会話のトレーニングを考えているけど、無駄なお金や時間は使いたくない、独学では不安という方はプロのコーチと一緒に確実に中国語力を身につけることをおすすめします。

ここでは私が運営している中国語のコーチングスクール「the courage」をご紹介させていただきます。

the courageとは?

the courage(カレッジ)は、いわゆる中国語教室ではありません。
本気で中国語力を伸ばしたい人のための中国語コーチングサービスです。

the courageは中国語を教えません。

受講生が目標に最短距離で到達するために「何を・どれくらい・どうやって」取り組めば良いかを全てお伝えし、自習で生じる悩み・挫折に対して、自ら苦労して中国語を学んだ経験のあるコーチが、適切なコーチングで徹底サポートすることで圧倒的な成果を出し続けています(HSK合格率100%)

一般的な中国語教室は、週に一度ネイティブ講師とのレッスンで、学習時間は月約4時間ですが、the courageでは月に80時間という学習時間を確保することで、短期間で中国語力を伸ばします。

数回のセッションを買うのではなく、目標達成のために必要な数ヶ月を買うと考えるとコストパフォーマンスは非常に良いです。

the courageのメリットは?

  1. 圧倒的実績に基づいた効果的なカリキュラム
    700名以上の指導経験があるコーチが最も効率的なカリキュラムを設計。
  2. コーチングだから継続できる
    適切なコーチング&日々の学習モニタリングが学習の継続を可能にします。
  3. 指導実績豊富なコーチ陣
    高品質な語学コーチングを提供するという理念に基づき、在籍コーチは全員指導経験豊富で優秀なコーチです。

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カウンセリングは無料、無理な勧誘も一切ありませんので、ぜひ一度直接コーチに相談して見てください。

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無理な勧誘など一切ございませんので、是非一度コーチとお話しください。

ABOUT US
伊地知太郎中国語コーチングスクールthe courage代表コーチ
大学在学中、中国の北京師範大学に留学し、1年で中国語力をビジネスレベルにまで高める。帰国後、三菱重工業株式会社にて海外人事・資材調達業務を経験。その後、語学コーチングスクールPRESENCEにて700名以上の受講生の語学学習をサポート、コーチの育成や中国語コースの立ち上げを経て、語学コーチングスクールthe courage(カレッジ)を設立。